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みーの初期研修

お医者さん1年目の「みー」が,医学に関する知識や日々感じたことをまとめています.

妊婦や授乳婦に投薬してよい薬剤

産婦人科

妊娠中の人が尿路結石になったら,鎮痛薬は何を使えばいいのだろう?という疑問を持ったので調べてみました.

妊婦への危険度は米国FDA基準を調べればよいそうです.

  • A: 安全.(あんぜんのA)
  • B: 動物実験で安全 (びみょうのB)
  • C: 動物実験で有害 (必要ならばしかたないのC)
  • D: ヒトで有害だが利益あれば許容 (ダメのD)
  • X: 禁忌

f:id:atsuhiro-me:20160825170837j:plain:w400 *1

授乳婦への危険度はMedications and Mothers' Milk 2012 を調べればよいそうです.

  • 1: ほぼ安全
  • 2: おそらく安全
  • 3: データ無し
  • 4: ヒトで有害だが利益あれば許容
  • 5: 禁忌

f:id:atsuhiro-me:20160825170845j:plain:w400

これらのデータは今日の治療薬にも収載されているので,すぐに調べることができます.

例えばアセトアミノフェンは比較的安全な解熱鎮痛薬として有名ですが,以下のように,妊B,授乳L1となっています.

f:id:atsuhiro-me:20160825170812j:plain:w300

*1:今日の治療薬2014 m2plus版より引用,以下同様.

パニック障害を漫画で学ぶ

精神科

精神科の勉強は,文章の教科書を読むよりも患者さんが書いた漫画を読んだ方がずっと分かりやすいです.

とあるアラ子さんがパニック障害になった時の様子を漫画で公開しています.(2016.8.25現在無料で読める)

togech.jp

症状とまとめると,

  • 突然「息が苦しい...」→呼吸困難,呼吸促迫
  • 「脳みそを取り出されてネットに入れられて宇宙でブンブン回されてる感じ...」→パニック発作
  • 美容院のシャンプー台,満員のエレベーター,混んでる電車,歯医者が苦手
  • 発作がまた再発するような気がする→予期不安
  • 「いまだかつて感じたことのないほどの恐怖心」,動悸,下痢→SSRIの過剰摂取によるセロトニン症候群

となります.

こういった漫画には,患者さんがどんな気持ちで苦労をしてきたかが詳細に綴られているので,医者としてどのように対応したらよいかの参考になります.

慢性骨髄性白血病(CML)の治療薬の覚え方

血液内科

慢性骨髄性白血病(CML)の治療薬である,チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)は現在たくさん開発されています.現在はイマチニブ (グリベック®),ダサチニブ (スプリセル®),ニロチニブ (タシグナ®),ボスチニブ (ボシュリフ®)が存在し,それぞれ特有の副作用があります.まとめてみました.

(記事中で特定の薬を悪く表現している箇所がありますが,覚え方を提案しているだけであり,薬そのものを批判しているわけではないことを予め断っておきます.)

一般名の接尾語

チロシンキナーゼ阻害薬 (Tyrosine-kinase inhibitors)の頭文字をとって,Tyrosine-kinase→TI, inhibitor→NIB と変化させ,-tinibという接尾語がつきます.例えば,ImatinibならばImaという名前のTKIという意味になります.

イマチニブ Imatinib (グリベック®)

ノバルティス ファーマが開発した世界初のチロシンキナーゼ阻害薬で,2001年5月に米国で承認されました.けっこう昔の薬です.Bcr-Abl融合蛋白が恒常的に活性化しているのを阻害し,細胞の増殖を抑制します. *1

初期の薬なので,イマイチだから,イマイチニブ,と覚えます.

ダサチニブ Dasatinib (スプリセル®)

イマチニブよりもたくさんの種類のチロシンキナーゼを阻害するように設計されたチロシンキナーゼ阻害薬です.Spryは「健康な」という意味で,CMLの治療で健康な細胞が増えますようにという願いを込めて,Spry + cell→スプリセルと命名されました. *2

Srcファミリーキナーゼを阻害することで胸水貯留を来しやすく,ダサいので,ダサチニブ,と覚えます.

ニロチニブ Nilotinib (タシグナ®)

イマチニブよりもBcr-Abl融合蛋白特異的に結合するように設計されたチロシンキナーゼ阻害薬です.targetであるBcr-Abl特異的にsignalを送ることから,target signal → タシグナ と命名されました.

膵炎や血糖値上昇が起こりやすく,服用に二の足を踏むから,ニノアシニブ,と覚えます. *3

ボスチニブ Bosutinib (ボシュリフ®)

上記3つの薬は現在日本でfirst lineとして使用されています.ボスチニブは上記の薬で治療抵抗性を示すCMLに対して,second lineとして使用が許可されています.Bosutinibで快適な生活を,と願いを込めて,Bosu life→ボシュリフと命名されました. *4

新しい薬だけあって,ニロチニブとダサチニブのよさを足したような薬で,副作用が比較的少なく,ボスみたいな存在感があります.だから,ボスチニブと覚えます.

今後もよりよいチロシンキナーゼ阻害薬が開発されて,CMLの患者さんのQOLが改善されていくといいなと思います.

*1:イマチニブ インタビューフォームより

*2:ダサチニブ インタビューフォームより

*3:ニロチニブ インタビューフォームより

*4:ボスチニブ インタビューフォームより

入院の個室と総室

みーの意見

病室には大きく分けて個室と総室があります.

個室は1部屋に1人の病室のことで,総室は1部屋に4人程度の病室のことです.

総室を希望する患者さんもいれば,個室を希望する患者さんもいるので,双方の意見をまとめてみました.

  • 総室派
    • 隣に人がいれば,病気の話ができて心強い.1人だと孤独な戦いのような気がして寂しい.
    • 費用が安い.
  • 個室派
    • 隣に人がいると,気を使ってしまって気が休まらない.1人ならば悠々自適に過ごせる.
    • 自分のスペースがたくさんあって便利.
    • 総室で窓がないベッドは圧迫感がすごい.
    • 総室に入院した時,隣の人のイビキが夜すごくて眠れなかったことがあるので嫌.

考え方次第でいろいろな解釈ができますね.

患者さんから謝礼を渡されたけど丁重にお断りした話

みーの意見

先日,みーが担当していた患者さんが元気になって退院しました.

退院直前に患者さんと話をしていた時のことです.その患者さんは無言でみーの白衣のポケットに封筒を入れました.

中身は確認していませんが,形から推察するに金銭的何かでした.病院の規約で「患者から医療費以外の金銭は受け取らないこと」とあるので丁重にお断りしました.患者さんは「みー先生にはとてもお世話になったから,お礼です.お礼ができないと辛いです」と言って悲しそうな顔をされました.患者さんの立場を尊重しつつお断りするのが大変でした.

みーは謝礼なんて過去の習慣だと思っていました.しかし医者になって2ヶ月足らずで,いや,2ヶ月足らずしか経験がない医者なのにこういう場面に遭遇したことにかなり驚きました.

「医者 謝礼」などと検索すると,謝礼はしたほうがいいとか意味が無いなどいろいろな主張がなされていますが,お断りするのが大変なので謝礼は持ってこないでほしいというのがみーの意見です.

血が湧き上がるような骨の痛み

血液内科

悪性リンパ腫に対してR-CHOP療法をしていた患者さんの白血球数が1000近くに低下してきたので,G-CSF製剤(=白血球数を増加させる薬剤)を投薬したところ,3日後に腰痛が出現しました.血が湧き上がるようにドクドクと拍動するような痛みとおっしゃっていました.

指導医に相談したところG-CSF製剤が原因ではないかとアドバイスを受け,添付文書を読んでみました.

好中球減少症の対象患者延べ7175例中935例(13.0%)に副作用(臨床検査値異常変動 を含む)が認められた。主な副作用は骨痛(胸部、腰部、骨盤部等)124件(1.7%)、発熱117件(1.6%)、腰痛108件(1.5%)、肝機能異常40件(0.6%)等であった。*1

どうやら,骨髄で造血が盛んになることで骨の痛みを来すことがあるそうです.筋肉を激しく使うと筋肉痛が起こるように,骨髄も激しく使うと骨痛が起こるのかもしれません.造血が盛んになった痛みを「血が湧き上がるようにドクドクと拍動する」と表現した患者さんの表現力に感動しました.

なお,白血球数が正常になった頃に,腰痛は自然に消失しました.

*1:グラン® 添付文書より引用

心揺さぶる声

みーの意見

先日,多発性骨髄腫の患者さんが入院し,みーが担当になりました.

その患者さんは,数年間原因不明の痛みに悩まされていました.最近になってやっと多発性骨髄腫による骨病変が痛みの原因だったのだと診断され,手術を行い,先日抗癌剤治療を開始しました.

患者さんに何度か会って話をしているうちに,みーに心のうちを話してくれました.いろいろな病院に行ったけれども原因が特定できず,痛み止めを出されるだけで,それでも痛みは改善されず,歩くのもままならなくなって心細い日々を送っていたそうです.最近やっと診断がついて,今は手術が無事に終わって痛みも消失し,自由に歩けて,多発性骨髄腫の治療も開始できることをすごく幸せに思っているそうで,話の最中に感極まって涙を流す場面がありました.

とても辛い経験をされた患者さんの話を,医者になってから初めて直接聞きました.心をすごく揺さぶる生々しい話でした.初めてのことだったので対応に少し戸惑いましたが,みーなりに一生懸命聞いて思いを受け止めたつもりです.会話の最後に,「みー先生,これからも抗癌剤治療をよろしくお願いいたします.」と深々と頭を下げられました.みーを医者として信頼していただいているのだなと思い,身が引き締まる気持ちで,病室を後にしました.

「患者さんに寄り添って共に病気を克服するのが医師患者関係の理想である」という教科書の一文の意味が少し分かった気がしました.