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みーの初期研修

お医者さん1年目の「みー」が,医学に関する知識や日々感じたことをまとめています.

夢の中で寝た

みーの意見

当直で病院のベッドで寝ていた時の話です.患者さんが来てPSHで呼ばれたのに,起きられずにそのまま寝てしまいました.

もう一度患者さんが来て呼ばれました.今度は起きられました.さっき起きられなかったのは何時のことだったんだろうとPSHの着信記録を見ましたが,そのような着信はありませんでした.

どうやらPSHで呼ばれたもののそのまま寝た夢を見たようです.

病院で寝ても気持ちは全然休まらないことを実感しました.

医学生のうちに学ぶべきこと 研修医になってから学ぶべきこと

みーの意見

みーは効率至上主義な性格なので,勉強をする上で「この勉強は今する必要があるのか」ということが気になります.医学生のうちに学ぶべきことと,研修医になってから学ぶべきことを,コストパフォーマンスの面から考察してみます.

診断学は研修医になってから

大学で診断学の講義がありましたが,ぶっちゃけ理解できませんでした.鑑別疾患を想起せよ,と言われても,疾患の知識が不十分ではどうしようもないのです.まずは国家試験を利用して疾患の知識を深めてから,診断学を勉強する方が効率がよいです.

また,病院では実際の患者さんの診断に直接関わっていけるので,指導医がどんな検査をオーダーして結果をどのように解釈しているかを観察すれば,医学生の時の10倍ぐらいの効率で診断学が勉強できます.教科書で症例集を読むのも,何も経験がない医学生の時と,臨床を少しでも経験した後では,感じ方が変わります.

したがって,医学生で鑑別疾患が全く分からなくても,そんなに心配する必要がないと思います.

診断学で最も重要なのが,検査の感度・特異度の理解です.医学生だと,「Murphy signがあるから胆嚢炎だ!」という1対1対応で十分ですが,Murphy signの感度特異度は100%ではないので,必ずしも胆嚢炎とは言い切れません.感度特異度の概念なしに診断学を勉強することは全くの無意味だと思います.

薬の商品名も研修医になってから

使わない知識は忘れます.研修医になったら毎日薬の名前と悪戦苦闘することになるので,自然に覚えます.商品名は国家試験には出題されないので,医学生のうちは,一般名を程よく覚えておくレベルで十分だと思います.

疾患の各論的知識は医学生のうちに

イレウスでは立位腹部レントゲンでニボーが見えるよ,といった疾患の各論的知識は医学生のうちに記憶しておくべきだと思います.研修医は忙しく,他にするべきことがたくさんあります.有名な疾患の病態生理,症状,検査,診断,治療を暗記しておくのが理想だと思いますが,YearNoteの各疾患の概念の記述が頭の中にイメージできれば最低限大丈夫でしょう.

医学以外のことは医学生のうちに

研修医になると,学生時代と比較して自由になる時間が少なくなります.旅行や趣味など好きなことに時間を使うのがよいと思います.

治療法がない慢性疾患の外来診察の難しさ

みーの意見

とある日に,筋ジストロフィーの患者さんが過換気症候群になり来院しました.

筋ジストロフィーは徐々に筋力が低下する疾患で,根本的な治療法がなく,次第に歩行困難となり,重症ならば呼吸不全や心不全で死亡します.そのため,専門の病院で診察を受けても,今の状態を評価され,日々の生活のアドバイスだけで終わってしまうようです.そのような診察を受けることに全く意味を感じないため,最近はかかりつけの専門病院を受診していないとのことでした.

別の日に,脊柱の傍に腫瘍が指摘されているが増大しないため経過観察になっている人が同部位の疼痛を訴えて来院しました.

CT検査を行ったところ腫瘍の大きさは不変でしたが,脊柱の傍のため少し神経を圧迫しているような印象がありました.神経が刺激されて疼痛が出現したのだろうと考え,かかりつけの専門病院を受診するように勧めました.しかしながら,診察は年1回MRI検査を受けたあと外来で数時間待って,「大きさは変わらないので1年後にまた来院してください」という説明の繰り返しで,そのような診察を受けることに全く意味を感じないため,通院を中断しているとのことでした.

医者としては,疾患の増悪がないことを定期的に確認することが診察なのだと考えます.しかし患者さんにしてみれば,何もしてくれないと感じるのかもしれません.治療法がなかったり,経過観察でよい場合に外来でどこまで患者さんに寄り添ってあげられるかが,長期間の診察継続のために重要なのかもしれません.

曲げる鉗子

麻酔科 道具 由来

マギール鉗子は経鼻気管内挿管を行う時に使用する鉗子です.下の写真のように根本を曲げることで,口の中で操作をする時に視野を確保できるように工夫されています.

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根本を曲げる鉗子 → まげーる鉗子 → マギール鉗子

というのが名前の由来です.

本当は麻酔医のIvan Magill先生が発明した鉗子です.*1

重複する略語

まとめ

全く別の疾患なのに略語が同じだと,勘違いが起こり危険です.

MS

循環器内科ならば mitral stenosis 僧帽弁狭窄症

神経内科ならば multiple sclerosis 多発性硬化症

HL

多くの医者は hyperlipidemia 脂質異常症

血液内科ならば Hodgkin's lymphoma ホジキンリンパ腫

DM

糖尿病専門医ならば diabetes mellitus 糖尿病

膠原病内科医ならば dermatomyositis 皮膚筋炎

SJS

普通は Sjögren syndrome シェーグレン症候群

時々 Stevens-Johnson syndrome スティーブンス・ジョンソン症候群

フルネームで記載しましょう.

患者は見ている

気になる症例 みーの意見 消化器科

救急外来に,治療困難な段階まで進行した肝細胞癌の患者さんが救急車で来院しました.数日前から腹痛と呼吸苦が急に出現したそうです.精査した結果,肝細胞癌破裂による腹腔内出血*1を認めました.

肝細胞癌破裂は肝細胞癌の死亡原因の1つで,動脈塞栓術によって治療を行います.また,出血のためショックバイタルになっており,早急な輸液と輸血が必要な状態でした.医学的には入院して治療を行わないと数日のうちの死亡する可能性が高い状態でした.しかしながら患者さんはこれ以上の治療を望んでおらず,自宅で最期を迎えたいから今日は家に帰りたいと言いました.

患者さんに入院を希望しない理由を尋ねると,「主治医とはこれ以上の治療を行わない方針になっているから」とおっしゃいましたが,よくよく話を聞くと,「肝細胞癌の治療をしてもらったけども痛いだけで全く効果がなかった」「入院しても何もしてもらえないし,主治医が1回も来なかった日もあった」「病院の食事は美味しくない」「入院の部屋に関してトラブルがあった」など,主治医や病院に対して不信感がある様子でした.

主治医や病院に対して不信感があるのに,これ以上の癌治療は行わないという決断をすることは果たして意味があるのでしょうか.癌治療は行わないと言いながらも救急要請をしていることから,今の苦しさをなんとかして欲しいという気持ちがあるのは明らかです.また,在宅医療などの緩和ケアの導入がほとんどなされていない状態だったため,このまま帰宅しても急変してどうしようもなくなってしまうことが予想されました.最終的には,輸血を行いながら在宅医療の導入を行うために短い間だけ入院するということで納得されました.

医者として働いていると,患者さんに適切な治療をできているか不安になることが多いです.しかし,「主治医が1回も来なかった日もあった」という発言から,入院中の患者さんに「調子はいかがですか?」と毎日話をしに訪れるだけでも十分に意味があると教えてくれました.患者さんと向き合うのは時に辛いことですが,目を逸らしてはいけないのだと実感しました.

*1:肝細胞癌破裂例の治療 と予後 http://journal.jsgs.or.jp/pdf/023122757.pdf